仕事の帰りには気が向くと木場のピンバイスさんによるのであるが、ある時72航空機キットの棚を物色していて「おや?」と思った。
有名なエアフィクスの赤箱の中で1つだけ箱の形状が違うものがあったのである、あの、ほら。
昔のスケベゲームの箱見たくなってるヤツだよ! (←みんな余計に混乱するわ)、上蓋と箱に別れているものではなくて、横開きのパッケージになっているヤツがあったのである。
機種はスピットファイアMk1a。
イギリスのメーカーなら気合い入れるだろうなあ、と思いつつも以前エアフィクスのアルバトロスDⅤを買って帰って箱を開けたときの衝撃を思い出して、渋い顔をする俺。
それまで俺が組んだ事のあるプラキットと言えば外枠のランナーの中にパーツが配置されているTHEスタンダートプラモデルだった、少なくとも幼稚園くらいの時にハセガワの72紫電改を買って貰って箱開けたらそうだったのでもう20ウン年そのスタイルなんだと思って居たのである。
が、しかし。
エアフィクスの72アルバトロスは所謂“クリスマスツリー型”配置、要するに幹になるランナーが1本通っていてそれから葉っぱが生えるようにパーツがくっついている状態だったのだ。浅学な俺はそれを知らずに買って帰りビックリ仰天、と。まぁ無知というのは恐ろしいもんである事よ。
しかし気になった、理由は単純である。
72の大戦機キットとしてはあり得ないくらい安かったのだ。
今の小学生の毎月のお小遣い相場を俺は知らんが高校三年時の俺の小遣い(月初支給制)だと一個飛行中隊組めたんじゃないか? まぁその額を貰ってた理由は主に参考書等の購入のためなのだが支給時に使途を限定されなければどうなるかは
高校三年時の俺も高級官僚も同じである。
閑話休題。
まぁ兎も角昨今の厳しい経済状況を考えても多分小学生諸君でも買えますよ、あの値段設定なら。
しかしまぁいくら安くても再版キットで年期が入ってたりすると俺みたいに箱開けて衝撃を受ける羽目になるのであるが、気になるものは気になる。
意を決して店長に「コレってパッケージ違うけど新金型かなんかなんスか?」と尋ねると『よく売れた』との返答、まぁ売れるだろう。なんつっても
“スピットファイアだから”な、Bf109でもFw190でもそうだがなまじバリエーションが多いからファン層が分厚い。とりわけスピットファイアのMk1aならB.O.Bで善戦したタイプである、前の晩に『空軍大戦略』でも見ていれば一発だろう。俺がツーリングに行く前の晩には『大脱走』を見ないのと逆だね、無駄にフェンスを跳び越えたくなるね、スティーブ・マックイーンばりに。
……また話が逸れた、そんで話を聞いてみると矢張り新金型だとの事。組むのにストレス感じないのなら俺の
“スピットファイアバージン”をエアフィクスに捧げるのもよろしかろう、てんで手間をかけるのを承知で中を確認させて貰う。
……暫し無言、本当にあの値段でいいのか? それが最初に頭を過ぎった。
俺は基本的に現用機はあまり好きではないので組んできたのは大戦機中心だがまぁ下手は下手なりに努力するものでアホ見てぇ数を組んでいる(東京に出てくるに当たって実家に置くにも邪魔だというのでほぼ廃棄……)、しかし当時の価格帯でもこんだけ好くできているキットにはお目にかかった事がない。
「結構モールドのラインがしっかり入ってるんですね……」、と口に出してから気付く。指定の塗料と元の金型作るときにもうハンブロールのエナメルを使う事を想定してあるんだ、と。エナメルだからエアブラシじゃなくて筆塗りで仕上げる、だからあのくっきりモールドなんだ、わざわざ二度手間のスジ彫りをしなくていいように。
極めつけはパーツ点数、72航空機だと小さい部類に入るランナーに必要最小限のパーツ、それが2枚のランナーに納まっている。
そりゃー飛ぶように売れたろう、極端な話、俺に子供がいて大戦機のプラキット組ませようと思ったら多分これが一番最初に買い与えるキットになるだろう。
久々に機体に惚れたとかメーカーに惚れたじゃなく、
“キットに惚れた”ので当然購入し帰宅。帰宅してランナーの1枚1枚じっくり見るとやっぱり最適な塗料はエナメルなんだろうな、と思う、別にハンブでなくても好きなエナメル使えばいいと思うが。俺は手持ちのエナメルがなかったのでGSIで塗っているがブラシは使ってない、筆塗りである。前述とかぶるが恐らくエアフィクスもそれを想定してるんでしょうよ、エナメルはムラになりにくいから昔は俺も船も空モノもエナメルだったし。それにあのモールドを生かす事を考えると筆塗り、しかもエナメルなんだろうなあ、ラッカーよりも。
で、その後に出た零戦21型筑波航空隊は入荷当日にたまたまピンバイスさんにお邪魔していたので速効で購入。ホビーショー(幕張)で確認してはいたがとてもよくできている、というかスピットと同価格なので日本メーカー駆逐されかねないぞ、これ。いや、マジで。
んで、話は変わって先日ハセガワの“しんかい6500”を予約していたのでピンバイスさんを訪れた折、店長と話していてたまたまマッチボックスの話になり、「浅学ながら実物見た事がない」という話をしていたら店頭在庫で置いてありまたまたお手間をおかけしてキットを見せていただいたのだが、俺は“所謂マッチボックスキットに関する評価が見当違いの事を言っている”と言う感想しか持たなかった。と言う言い方は非常に分かりづらいのでもそっと簡単に言うと、「なんでこんなによくできてるのに悪評言って回るヤツがいるんだろう?」である。
所謂深いモールドに関しては当時一般的だった塗料がエナメルで、エアブラシなんかも普及しておらず筆で塗るからあれくらい深くないとモールドが埋まるからだというのはその前にエアフィクスのスピットと零戦を見ていたからすぐ気付いた。店長曰くランナーがカラフルなのは子供が色を塗らなくても持って空中戦ごっこ等で楽しく遊ぶためだとの事、そしてストレートで組んでも実に映える、コレはモールドも含めてと言う事だった。
それでまぁなんの話になるかというと所謂マーケティングの話になるんだと思うのだよねえ、俺は。
マッチボックス、バンダイ、それからエアフィクスの新金型、この辺は非常に綿密に諸々のリサーチをやったんだと思いますね。バンダイいきなり出てきたけど理由は後述。
まずマッチボックスを参考にしてバンダイは“ガンプラ”をやったんだろうね、の理由は模型製作で皆が一番悩む“塗装”のステップを“省いても構わない”製品にしたと言う事。俺はガンプラを組んだ事はないけど弟が昔作ってたのを見た事があるからランナー毎の複数色成型だと言うことくらいは知っていますよ、そんで組んでましたからね、家の弟ね。塗装はいきなり入る人には(大人だろうが子供だろうが)ハードルが高いし少額ながら揃えるものは多いし、ご両親にとっては“部屋を汚される”等々があるからあまり歓迎されない。だったら製品企画段階で“塗装を省いても見栄えがする製品にする”と言う共通認識の下製品作りを進める。ただあくまで塗装“しなくていい”訳ではなく“上級者は塗装すればもっといい仕上がりになります”と言う状態で製品作って店頭に並べる、そうすると同じモノを作ってる子供の間にも差がついてきて必然的にキットも関連商品も売れる。後年TAMIYAがミニ四駆でやったけれど旨いやり方だと思いますね。
マッチボックスとエアフィクス新金型の共通点というか類似点はユーザー層が多い塗料は何かと言う事を考えてるんだろうな、になりますかね、エアフィクスはハンブロールと同じ傘下にあるからハンブロールを押さざるをえない状況にあるとしても。『プラモデルを作るのは好きだけれどそこまでお金はかけられない』という状況の人は老若を問わず沢山いらっしゃるわけで、そうなればやれコンプレッサーだの塗装ブースだのエアブラシ本体にしても何ミリだのは揃えられないし、その金があればプラモ買いますになる。その点エナメルは筆で乱暴に塗ってもムラになりにくい(個人的感想)し、筆で塗るから必要なのは筆と塗料皿くらいか? 換気は窓を開ければいい。そこまで考えたかは別にして少なくともマッチボックスのモールドに関しては完成時のスタイリングの他に明らかに筆で厚い塗膜を作ったときに潰れない為だと俺は思ったし、73年当時には世界的に塗料の主流はエナメルだったと考えれば自ずと答は出そうなものですけれども。まぁエアフィクス新金型に関しては上記に加えてハンブロールと同傘下なのが重きをなしているかな?
と言うようなね、事を考えねばいかんのかなあと思いますよ、最近ね。
そりゃまぁレジンや金属パーツてんこ盛りで精密に仕上げるのも一つの方法だとは思うけれど、出来ないという人はいるわけでね。そのギャップをどうやって埋めるんだというところがこれからの課題なんだろうねと思っていますよ。コレに関しては別にプラモに限った事じゃなくてなんだってそうだと思うんですがもうある程度市場動向がはっきりして居るモノではないモノの場合、視野狭窄ではいかんのでしょうね。昨今ソフトの開発(携帯アプリetc)は百花繚乱状態だから、今年度はそれで良くても年度開けたらもう通用しないかも知れない。たかがプラモと侮るなかれ、凹モールドのくっきりレベルだけで何考えてそうしたのか理由が透けて見えますねえ。
でもまぁ実際にNowスピットと零戦をGSIで組んでますけどそんなに問題は感じませんけどね、機体の塗装までは行ってないんでそれはやってみないと分からないけど。
失敗しても、リーズナブルですからね、とっても。
最後に一言、
お願いだからピンバイスの店長が『アレはすごいらしい』と絶賛していたハンブロールの水性塗料、どっか輸入してくれ! 気になってしょうがねぇ!!